婚礼衣装「掻取」：その歴史と魅力

婚礼衣装「掻取」：その歴史と魅力

「掻取」とは？

– 「掻取」とは？

「掻取（かいどり）」とは、日本の伝統的な婚礼衣装である打掛けの中でも、特に優雅で格式高いとされる一種類を指します。

その名の由来は、帯を締めずに着用するという独特な着付けにあります。帯を締めないため、歩く際に裾の褄（つま）が地面に触れてしまわないよう、花嫁は自らの手で褄を軽く持ち上げて歩く必要があります。この仕草を「掻き上げる」と呼び、「掻取」という名称の由来となっています。

裾を持ち上げる仕草は、決して慌ただしいものではなく、ゆっくりと優雅に行うのが特徴です。この動作によって、花嫁の所作はより一層美しく、気品あふれるものとなります。

かつては公家の女性が着用していた掻取は、その格式の高さと美しさから、現代でも多くの花嫁を魅了してやまない婚礼衣装の一つとなっています。

「掻取」の歴史

– 「掻取」の歴史

「掻取」の歴史は、遠い昔、平安時代まで遡ります。 当時はまだ、現代のように着物と帯を組み合わせる形式ではなく、ゆったりとした袿（うちき）と呼ばれる衣服が主流でした。その袿の上に羽織る上着として、掻取は誕生しました。

宮中の高貴な女性たちの間で愛された掻取は、その美しさ、優雅さで、やがて武家社会にも広まっていきます。そして、婚礼という人生の晴れ舞台を彩る衣装として、欠かせないものとなっていきました。

婚礼衣装としての掻取は、白無垢や打掛といった豪華な衣装とは異なる、慎ましくも気品あふれる魅力を持っていました。その魅力は、時代を超えて受け継がれ、現代の結婚式でも、伝統的な文様や技法を生かした掻取が、花嫁を美しく彩っています。

このように、掻取は、長い歴史の中で、宮中の優雅さ、武家の格式、そして現代の洗練された美意識を取り入れながら、その姿を変えてきました。そして、これからも、日本の伝統美を象徴する衣装として、人々に愛され続けるでしょう。

「掻取」の特徴

– 「掻取」の特徴

「掻取」は、その名の通り、生地を掻き取って模様を表現する技法を用いた婚礼衣装です。最大の特徴は、金糸や銀糸をふんだんに使った刺繍や、友禅染めで施された豪華絢爛な装飾にあります。その華やかさは、まさに日本の伝統美の結晶と言えるでしょう。

模様には、縁起の良い鶴や亀、松竹梅などの吉祥文様や、四季折々の花々、鳳凰や龍といった想像上の生き物などが、職人の手によって緻密に描かれます。これらの文様は、単に美しいだけでなく、夫婦の幸せや子孫繁栄など、未来に対する願いが込められています。

生地には、美しい光沢と滑らかな肌触りが特徴の錦織物や、重厚感と気品漂う緞子など、高級織物が用いられます。これらの織物は、そのものが持つ高級感に加え、刺繍や染めの美しさをより一層引き立てます。

掻取は、その豪華さ故に、かつては武家や裕福な商家など限られた層の人しか身に纏うことができませんでした。しかし現代では、その美しさが見直され、多くの花嫁の憧れの的となっています。

「掻取」の種類

花嫁衣装の「掻取」は、大きく分けて「本振袖掻取」と「引き振袖掻取」の二種類があります。

「本振袖掻取」は、未婚女性の最も格の高い晴れ着である振袖に、豪華な刺繍や模様を施したものです。袖が長く、華やかで若々しい印象を与えます。結婚式の際に花嫁が着用する衣装として、広く知られています。

一方、「引き振袖掻取」は、裾を引きずるように長く仕立てられた、既婚女性の正装です。裾の長さは、身分や格式によって異なり、特に長いものは「大引き」と呼ばれ、非常に格式が高いとされています。結婚式や披露宴など、華やかな場にふさわしい風格を漂わせる衣装です。

このように、「掻取」は、未婚女性と既婚女性それぞれの場に合わせた、格調高い日本の伝統衣装です。どちらの「掻取」も、日本の美意識と伝統が凝縮された、素晴らしい衣装と言えるでしょう。

現代における「掻取」

現代でも多くの花嫁を魅了してやまない婚礼衣装、「掻取」。その魅力は、古き良き時代の美しさだけにとどまりません。現代の結婚式にも映える華やかさや、写真に美しく残る点も、多くの花嫁の心を掴んでいます。
近年では、伝統的な模様に加え、西洋風のデザインや、花嫁それぞれの個性を表現する色使いの掻取も登場しています。選択肢が広がったことで、自分にぴったりの一着を見つけやすくなりました。
さらに、掻取は、白無垢や色打掛と比べて軽量で動きやすいという利点もあります。そのため、挙式だけでなく、披露宴や二次会など、さまざまなシーンで着用することができます。
このように、伝統美と現代的な魅力を兼ね備えた掻取は、これからも多くの花嫁から愛され続けることでしょう。